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一級建築士制度を考える・・・4

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前回は、構造設計という仕事の現状について、私見を書きました。
なぜ、構造設計という仕事が建物を設計するうえで極めて重要であるのに、構造設計を理解している人が少ないのでしょうか?今回は、この点を掘り下げて書いていきたいと思います。

「一級建築士制度を考える」

4.一級建築士の構造に関する知識はどのくらい?

「一級建築士」になることは、建築を学ぼうとする若者にとってまず第一の目標であり、難関だと思います。
中には、「一級建築士」になることが夢でその後のことは資格を取ってから考えるというような人もいるようです。まぁ、国家資格というものは一級建築士に限らずそんなものかもしれません。

一級建築士試験は、誰でも受けることができる試験ではありません。
(受験資格については、こちらをご覧ください。)受験資格を有する人のみでも、毎年約5万人が受験する大規模な国家試験です。

自分の頭の悪さを言い訳するつもりはありませんが、、勉強しないと合格できる試験ではないことは身を持って実感しております。。

わたしが、そこまでして必死になって取得した一級建築士試験とはどういったものなのか?
詳しくは、次回書きますがおおまかには、

1次試験(学科試験4科目)と2次試験(製図試験)があって、
1次試験(7月末)の試験で4科目(計画、法規、構造、施工)におおよそ7割以上得点した合格者が、2次試験(10月中旬)の製図試験に臨むものです。
合格率は、1次試験がおよそ20%、2次試験がおよそ30%で全体では合格率10%程度の狭き門です。

おおまかな概要はこんなところです。。
ここまで、読んで「大変そうな試験だなぁ・・」、「一級建築士ってやっぱりすごいなぁ・・」と思う方もおられるのかもしれません。
たしかに、振り返ると「おれもよく頑張ったなぁ・・」なんて思ってしまいます(笑)。

しかし!ここで、重要なのは試験の難しさではありません!
この試験に合格したら、どのような知識が身につくのか?
この試験に合格した「一級建築士」が世間一般にどのように思われているのか?
ということです。

まず、一級建築士に合格したら身につく知識とは、建築設計を行ううえで基礎となる知識です。
決して、一級建築士に合格したら全員が建築のエキスパートになる訳では全くありません。

一級建築士試験で求められることは、建築に関わる広範な分野の基礎的知識の習得であることを強調したいと思います。

なので、一級建築士試験の「構造」の問題で25点満点をとったからといって専門家であるとは限りませんし、専門家でも問題との相性で18点くらいしかとれないこともあるでしょう(13点ぎりぎり合格で、構造の専門家のような顔をしている人も中にはいるでしょう・・)。
ちなみに、わたしは構造が専門なので一級建築士試験で「構造」については、ほとんど勉強はしませんでした。満点ばかりではなかったですが、模擬試験も含めて平均的に20点以上はとれました。構造の専門家であれば、20点程度はとれる問題が多いと思います。
ここで、前回までの話を思い出して頂きたいのですが、
一級建築士合格者で設計を本業としている人は、意外と少ないこと(全体の3割程度という統計があります)。
また、その設計者の大多数は意匠・計画系の設計者であるということです。

一級建築士試験の「構造」の平均点は4教科の中でも一番低いです。つまり、一級建築士受験者の大半は「構造」を苦手としているということです。わたしが、通っていたN学院内でも、「構造はいくら勉強しても無駄・・」とか「構造は見るのもいやだ・・」という声がよく聞かれました。本試験までには、大体みなさんある程度勉強しているのでそこそこ点数が取れるようになりますが、試験勉強を開始した当初の小テストの平均点などをみると、大半の人が「構造」に対する下地が全くないのが分かります(他3教科の平均点の半分くらいしかないのです。。)。
「構造」を苦手とする人が多いのは、「構造」に物理と数学の知識が必要とされるからだと思います。
大学でデザイン系の勉強をしていた方は、「構造」は大学受験以来の「物理」や「数学」の試験との再会になるので、しんどいはずです(受験科目に物理のない大学も結構あります)。
また、試験で合格できる程度に勉強しても、その知識は実務で使わなければ見事に忘れます(笑)(それは、人の脳がそのようにできているのでしょうがないことですが・・)。

建築がしたい

デザインがしたい

屋台骨の設計とデザインは一体のもの

構造設計の勉強

物理や数学の勉強

苦手、分からない

構造は嫌い!

ちょっと、簡単に書きすぎかもしれませんが、あながち間違ってもいないでしょう。
デザインがしたいから、デザインだけをするのではなく、デザインがしたいからその土台となる物理や数学を勉強する必要があるとわたしは思いますが、
「嫌いなことをしてまでデザインはやりたくない」、
「構造は得意な人に任せてデザインだけをしたい」、という人達が圧倒的に多いのです。

この時点で、世の中の設計者の大半を占める意匠設計者が構造の専門家ではないことが理解してもらえると思います。それどころか、構造を苦手としている人も多数いることも理解してほしいと思います。

この、「構造嫌い」、「構造離れ」を生み出してしまっている原因は、前回書いた現状の構造設計業自体に魅力を感じる部分が少ないのも大きな問題だと思いますが、これまでの試験内容と建築教育に問題があると思います。「構造嫌い」の副作用は、意匠設計者に構造アレルギーとして業界に蔓延しているように見えます。その証拠に、意匠設計者は法規、規則、細則などを覚えるのは当然の義務なので得意なはずなのに、これが「構造規則」、「構造細則」となると「これは、構造のことだから構造設計者に聞こう」となってしまいます。。もちろん、構造規則や構造細則の大部分は暗記ものなので、物理の知識は不必要ですし、そのことを知っているか知らないかで、設計初期の計画に大きく影響する知識が多くあります。

次回詳しく書きますが、この問題は以下の考え方をすることで簡単に解決できると思っています。

・構造計算ができなくても、構造を理解することは十分可能である
・構造設計者が実務で使う物理の知識の大半は、初歩的な内容のみである
もちろん、物理や数学の知識まで習得して構造を勉強するのが一番良いのですが、その知識の大半は「構造計算」をするためのもので、必ずしも「構造設計」をするためのものではないと、わたし自身も実感しているので上記2点をとりあえず、意匠設計者に理解してほしい内容としました。
前回まで書いてきたように、設計者の大半が意匠設計者であるために、世間一般では設計者といえば「意匠設計者」であり「建築家」というイメージが極めて強いです。また、現状は意匠設計者が設計業務のイニシアチブを持っているということをもっと重く受け止めてほしいと思います。

それでも、デザインだけしたい設計者は、それはそれで構わないのですが、最低でもそのことをクライアント(依頼主)にちゃんと明示する必要があると思います。
デザインが「ブランド化」されている建築家以外は、そのデザイン行為に対して得られる報酬は本来極めて少ないはずです。クライアントの大半は、エンジニアリングの伴ったデザインを当然のように要望しているのです。

これまでの、建築設計業界の報酬体系は意匠設計者を元請として構造設計者等が下請けとなっていました。営業をして仕事を取ってくるのだから当然だという方もいるでしょうが、それは世間一般の「誤解」の下で成立していたとは言えないでしょうか。世間が冷静な目で建築設計業界を見るようになるには、まだ時間がかかると思いますが、現在の体系に歪があることは今回の事件が良い意味で証明したと思っています。

次回は、このような土台を生み出す原因の一つでもある一級建築士制度の問題点について、試験の問題や制度の問題も含めて書いていきます。

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