体調不良で、久しぶりになってしまいました。少しずつは書いてます。すいません。。
さて、
前回は、一級建築士の構造に関する知識について書きました。最近の新聞で、いままで構造計算が必要とされなかった木造建築にも構造計算が義務付けられるようになるようなので、ますます建築の構造に対する重要性が高まってくることを期待したいです。そのためには、制度の改正も必要不可欠です。そこで今回は、一級建築士試験そのものの問題点について、掘り下げて書いていきたいと思います。
「一級建築士制度を考える」
5.一級建築士試験の問題点は?
わたしが、一級建築士という存在を始めて知ったのは、いつ頃だったか思い出すと中学生の頃だったと思います。と言うのも、父が二級建築士なので、一級はもっとすごいのかぁ・・といった漠然としたものだったと思います。
やはり、建築という仕事を志したときに真っ先に「一級建築士」を目標にしたのは間違いないです。また、そういう方々はたくさんいると思います。
漠然と一級建築士を目指していた頃の「一級建築士像」は、一級建築士=かっこいい、一級建築士=お金持ち、などなどバブリーなことを想像していたことは否定できません。。
建築の勉強や、現実を学ぶにつれて「・・・ちょっと待てよ。。」という状況になっていったのは、一級建築士を目指している方、取得した方含めてあるのではないでしょうか(笑)。
ま、とりあえずそれは置いておいて、
わたしが、受験資格を得てからどのように取得したかを簡単に言いますと、
大学院を卒業して、すぐ3ヵ月後の7月末に実施される試験を受験をしましたが、入社した構造事務所の仕事を覚えるのでいっぱいいっぱいで勉強がほとんどできず、惨敗でした。。結局、翌年、翌々年も受験はしたものの仕事が忙しいのとまだまだ実務で覚えないといけないことが山ほどあり、まともに勉強できず、惨敗が続きました(こういう方が、建築業界は多いのではないでしょうか??)。結局、建築士受験で有名な某N学院に2年通って合格しました(少ない給料から3年半ローンを払いました・・)。。頭の悪さと意思の弱さの言い訳っぽいでしょうか??はい、言い訳です(笑)。
今回は、もっと詳しく一級建築士試験について書きます。
まず、
試験は、1次試験(7月末)と2次試験(10月中旬)とに分かれています。
1次試験がいわゆる学科試験で、その合格者(合格率20%程度)が2次試験の製図試験(合格率30%強)に臨みます。全体では、合格率10%程度の狭き門です。
1次試験の学科試験は、4科目あります。
・計画(音熱環境、色彩、空調、建築史、一般常識などを広く浅く学ぶ分野)
・法規(建築基準法、建築士法、消防法などの実際に建物を建てるためのルールを学ぶ分野)
・構造(構造力学、構造規則、計算問題などの構\造設計の土台となる分野)
・施工(施工規則、工事名称、工事用機械の名称など、監理をするための土台となる分野)
各科目25点満点で、合格するためにはおよそ7割の得点が必要です。
ただし、建築士として構造は得意だけど、法規は苦手みたいな偏った知識があるとまずいので、各科目で「足切り点」が設けられています。平均点によってばらつきはありますが、12点以下は「足切り」で問答無用の不合格となるのが基本です。(実際、わたしは計画12法規24構造22施工20合計78で不合格になったことがあります。。1点不足で不合格になる人が毎年1/2000の割合でいるそうです。。)
次に、2次試験の製図試験は、
学科試験時に与えられた製図テーマ(例えば、「宿泊機能のあるコミュニティ施設」などという漠然としたもの)をもとに試験当日に、具体的な設計テーマが与えられる試験です。試験時間5時間半という短時間で、試験問題を読み取りA2一枚で計画、製図を行うもので、学科試験終了直後からすぐに製図の訓練をしないと(実質2ヶ月半しかないので)なかなか時間内に書き上げることは難しい試験です。この製図試験の場合は、出題の意図をよく理解した計画がされているか、時間内に図面が仕上がっているか、の両者揃っていることが大まかに採点基準となります。
書いていると、当時の苦労を思い出します。。
今年受験される方、がんばってくださいね!!
さて、ここからこの試験自体の問題点、改善したほうがいいと思う内容について書きます(今年受験される方々は、モチベーションが下がるかもしれないので読まないでください(笑))。
まず、学科試験について、
わたしは、実務を3年ほど経験してから本格的に勉強をはじめました。なので、はじめは「下地がゼロの人たちよりは有利だろう・・」と思っていたのですが、実際はその逆だった気がします。。
つまり、実務は実務、試験は試験という割り切りが必要なのです。これは、日本特有のお受験体質というか、とても残念な部分です。なので、中途半端に実務経験があるよりは、真っ白な頭に知識をつめこんでいくほうが合格により近い試験だと言えると思います。
これは、わたしの経験上でも間違いありません。建物の設計経験のない一級建築士さんと何人も一緒にお仕事をしましたが、試験の知識が実務で邪魔をしている人もいるなぁと思うほどでした。
以前から、書いているように、世間一般では、一級建築士=エキスパートと思っている人が少なくないというのに、試験問題自体が実務経験を反映できないことが少なからずあるのでは、本末転倒なわけです。
わたしも、テストなどの解答にどうしても納得ができない構造の問題がいくつもあって、最初のうちは苦悩したものです(最後のほうは合格のために割り切りましたが・・)。
ここで、学科の科目別に問題点をわたしなりに挙げてみます。
計画:
そもそも、難しくしようがない科目だと思う。
出題範囲が広すぎるので、かなり浅い知識しか残らない。
勉強して得点できる問題が実務で有用とは言えない。
知らないと解答が分からない問題が多すぎる。
運にかなり左右される。
オタクな問題の出題が増えて点差をつけるための科目になりつつある。
法規:
法令知識を問うというよりは、日本語の読解力を試す問題が多い。
(以上、以下、超える、未満などのちまちました部分を問う問題が多すぎる)
試験の法規が得意なのは、法令に明るいのではなく、法令集を早く引く訓練をした人という傾向がある。
実務でのグレーゾーンとの境界があいまいである。
構造:構造の専門家であれば、良い復習になる問題が全体の60%程度ある。構造の専門家以外にしてみれば、酷な問題が多い。実務で有用な問題は、全体の10%程度しかない。
構造の楽しさを学べる問題は、ほとんどない。細則を問う問題は、オタクすぎるものが多い。
施工:
一番、実務とほど遠い科目と思われる。
暗記である程度得点できても、得点の実感がない科目と思う。
施工管理者が得点できない問題が野放しになっている。
試験の解答を実務で実際に行うことは、稀であると思われる。
試験解答が、「キレイゴト」すぎる。
こんなかんじでしょうか?他にも思うことがある方がいれば是非コメントください。
次に製図試験について、
これは、学科試験に自己採点で合格ラインだなと判断したらすぐに対策をしなければ時間的な余裕のない試験です。つまり、一級建築士として最低限必要とされる知識を問う学科試験を振り返る時間がないのは普通に考えても問題だと思います。学科試験と製図試験の間隔はもう少し余裕があったほうがいいと思います。
製図試験は、A2(縦430x横604)用紙1枚に平面図、断面図、面積表、立面図などを書きます。その他にエスキス用紙という紙が配られて、その紙に製図するための下書きや計画をすることになります。製図試験は、製図用具を自分で持ち込むのでかなりの大荷物です(重いので女性には酷な気もします)。ちなみに、製図用具一式を揃えるとなんだかんだで5万円くらいになりますが、当然ながらA2用の製図道具などCAD時代の現在では試験以外ではほとんど使わないので、かなりもったいないと個人的に思います。。まぁ、CAD時代だからこを、手で描く経験も重要だとも思いますが、使わなくなったA2の製図版の再利用方法でも考えるとちょっとしたビジネスになりそうです(笑)。
さて製図試験の問題点ですが、
製図試験は、合格者の人が口々に言うのが「学校に通わないと無理」ということです。
つまり、製図試験にはある種の「癖」があるということです。
そもそも、建築設計は答えがないから面白いのに、ある答えに近づけるための製図方法を学ばなければ
ならないのです。
そして、何よりも一番驚いたのが、建築士受験で有名な某N学院でのはじめの製図授業で、
「製図試験に実務経験は関係ありません。逆に実務をされている方は、実務は忘れて試験での製図方法を学んでください」と堂々と言っているのです。
みなさん、これが一級建築士試験なのです。。
正直、わたしは学科合格の喜びも忘れて目が点になってしまいました。。
ただ、実際合格するためにはそうせざるを得ないと思われます。
ローン払って通ってる学校なので、やらざるを得ないのです。。
このジレンマと戦うのに、1ヶ月はかかりました(汗)。2ヵ月半しか期間がなにのに。。
製図試験の具体的な問題点は、
・採点基準があいまい(採点者によってばらつきが大きい)。
・構造的に問題のあるプランが正解となることが多い(壁の位置、平面形状など)。・独創性を一切評価しない。
・出題文の表現があいまいで何通りにも解釈できることが多い。
といったところでしょうか?ご意見あればコメントください。
では、一級建築士試験をどのように変えれば良いでしょうか?
正直、試験は国(お役所)と学者さん達が作るものだと思いますので、大きな期待はできませんが、、個人的な意見としては、
1.年に一回の試験を最低2回にする。
→真夏に試験を行うのはどうかと思う。毎年、試験会場の冷房環境(暑い、寒い)の苦情があるはずなので考慮するべき。
2.試験内容は、実務を反映させるように民間団体の意見を取り入れる。
→試験と実務との大きなギャップこそが、建築業界の根底にある大きな問題であると自覚するべき。
3.試験のための勉強にならないような、試験問題作りをする(漠然としてますが・・)。
→近年特に、試験内容が実務に反映できないものになっている。難易度操作があからさまである。海外の資格試験を参考にするなどして試験を作成する側がもっと業界の現状を勉強しなければいけない。
4.製図試験を実施するにあたって、時代の変化、実施する大きな目的を考慮して見直すべき。
→現状の製図試験は、模範解答を作成してから問題文を作成すると言われている。そのようなパズルを完成させるような試験に設計者としてのどのような能力を問うているのか分からない。
以上です。
自分も経験したので一級建築士を取得するのは正直骨が折れました。。ですが、まだまだ試験内容に問題の多い試験であることは否めません。
耐震偽装問題で、各テレビ局でジャーナリスト達が、「一級建築士が何人もいるのに、偽造を見抜けなかったということは大問題だ!」と声を荒げてましたが、それは愚の骨頂です。資格というものの本質を理解していないとしか、言いようがありません。偽善者の正論でしかないと思いました。
自動車免許を取ったら、それでエキスパートですか?免許を取得してから何年も自動車に乗る経験を通じていろいろ学ぶものです。あの、ジャーナリスト達の論争を見ていて本当に腹が立ちましたし、ただこれが世論なのだと、自分に言い聞かせる必要もありました。
「設計者にとって最大の敵は、年齢である」と言った人がいます。
これは、設計に限った話ではありませんが、間違いではありません。
しかし、経験があると人は「油断」「手抜き」がでてくるものです。
「プロの手抜きより、素人の一所懸命のほうが良いものができる」と言った人もいます。
理想は、選ばれたプロが心をこめて仕事をすることなのは言うまでもありません。
建築士を受験する人たちが、どのくらい建築が好きなのか?
わたしは、ここが一番重要だと思います。
とは言っても、そうすると建築はデザイナー志望の若者に人気のある裾野の広い業界なので、好きなだけならかなりの人数がいることも事実なので、やはり一定の技術と知識を課すことも大事でしょう。
ようやく、試験制度にメスが入る好機ですので、良い改革になってほしいものです。
書き足し、書き足しで、かなり長くなってしまいました。。
連載が終わった時点で、読みやすくもう一度見直して細分化しないといかんですね。
では、
次回は、建築設計業界の大部分を占める「意匠設計者」の憧れであり目標でもある、「建築家」とメディアの関係について掘り下げて書いていきます。




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