11月になりました。
朝方の寒さから、時の流れの早さを感じる今日この頃です。
あっという間に、クリスマス、大晦日、正月・・・となるのでしょうねぇ。。
鬼が笑うので、このへんにしときましょう(笑)。
さて、
これから、「設計者とクライアント(施主)」の関係について、また不定期ですが連載を
書いてみようと思います。
この関係性から垣間見える建築業界の問題点を考えます。
・・・
施主(せしゅ)は、クライアント(依頼主)と同義で使います。
施主は、建物の種類によっていろいろな場合があります。
たとえば、、
・住宅の場合は、個人
・マンションの場合は、デベロッパー(不動産会社など)
・オフィスの場合は、法人(企業)
・公共施設の場合は、地方公共団体(国など)
などがあります。
本日は、まず、住宅の場合について考えます。
建物を建設するときに、当然ながら施主がお金を出します。
小規模の住宅であっても数千万円という高額なお金を出すことになります。
個人の施主の大半は、住宅ローンを組んで買い物をする人生で一度の最大の
買い物であることが多いでしょう。
人生で一度きりの買い物である、「家」の設計なのだから、こだわりがあるのが
当然のことです。
「日当たりの良い家にしたい」
「広いリビングがほしい」
「使いやすいキッチンにしたい」
「部屋は〜室ほしい」
「中庭がほしい」
「屋上庭園がほしい」
・・・
などなど。
大きな決心をした後は、様々な要望、欲求がでてくるのは人として当然のことです。
コストを優先して、建売住宅やハウスメーカーの量産住宅を購入する方もいると思いますが、
今回は、施主が個人の設計事務所に設計を依頼する場合を考えます。
施主が、個人の設計事務所に設計を依頼するときは、「こだわり」がかなりある方が
多いと思われます。
大手ハウスメーカーの住宅展示場にもいろいろ通って、家具やキッチンについても
かなり下調べをして、自分たちが良いと思ったものを頭の中で「切り貼り」した状態で、
設計事務所に依頼するケースが多いかと思います。
このような場合、施主にとって設計者は、
「自分達の作りたい形を正確に理解して、作業してくれる人」、だと思います。
ここで、設計者側からこのような要望のある施主が依頼を持ってきた場合を考えます。
設計者といっても、これもまたいろいろですが、
・効率を重視した現実的(保守的)な設計者
・デザインを重視した革新的な設計者
大きく分けると2パターンの設計者がいます。
(三谷幸喜さんの「みんなのいえ」という映画の中でこのあたりのことが良く描かれています)
前者は、工務店お抱えのいわゆる専属設計者のようなタイプです。
施主の要望を考えながらも、
建設するときの作業性を考えたプラン、コストパフォーマンスの良さの追求など
が念頭にあることが多いでしょう。
後者は、若手デザイナーに多いタイプですが、
雑誌に注目されるような建物に興味の大半があって、施主の要望が自分の好みと
大きくずれていると、仕事を断るような設計者のタイプです。
いずれの設計者であっても、まず施主と顔合わせをして、まず施主の要望を
詳しくヒアリングすることから始まります。
こだわりの多い施主の頭の中にある「切り貼り」された理想の家は、実際に形にするのが
とても難しいことが少なくないでしょう。
施主がスケッチしてきた家のプランを元にして、打ち合わせを始めると、
1階と2階の階段の位置がずれていたり・・壁がずれていたり・・法規に適合してなかったり・・
・・・
大半は、失礼ながらめちゃくちゃだったりします。。
(この状態で、施主のほうに構造安全性など考える余裕などないと思われます。)
それを現実の家として形にしていく作業は、かなり難儀なものです。
さて、
ここから設計のベースとなる基本計画作りがスタートします。
基本計画は無料で行う設計者が大多数なので、施主も複数の設計者に計画作りを
依頼することが多いと思います。
この段階で、施主に対する設計者のサービスの質の違いが現われます。
つまり、「プレゼンテーション能力」の差が顕著にでる段階になります。
短時間で、良い提案ができることが理想です。
しかし、、
ここで、短時間で良い提案をしてきた設計者に対して安易に仕事を依頼するのは、
少し考えたほうが良いと思います。
それは、
設計の能力とプレゼンテーション能力とは別モノだからです。
この段階で、見た目に惑わされてしまう施主は現実的にかなりの人数いると思われます。
要注意です!
一生に一度の大きな買い物なのに、設計者にスピードまで要求すると後々ろくなことがないです。
これは、経験的にも間違いありません。
とは、言っても、のんびるすぎるのも良くないので、このバランスはとても難しいところです。。
家は、設計してから竣工(しゅんこう・・・完成の意味)するまでに、時間がかかるものなので、
気分が変わったり、飽きたり、もっと良いものを見つけてしまったり、で変更したくなるからです。
設計が終わって、工事が始まってからの施主からの要望で設計変更というケースは、
非常に多いです。
「図面を見て想像してたより、狭いから・・」とか
「新しい商品が発売されたから・・」とか
「雑誌を見てたらやっぱりこっちがいいなぁと思って・・」などなど
設計者にとって、施主からの要望はできる限り聞き入れなければならない
「鶴の一声」となります。
設計料を頂戴するわけですから、当然といえば当然です。
しかし、以前からブログでも取り上げているように、
設計報酬というのは、そもそも低いのです。。
なので、2度手間、3度手間となっていけば、それをサービスで行うことは困難になります。
手間が発生した時点で、設計者が施主に「変更設計料」を請求するのは、当然の権利ですが、
これがまた難しいのです。。
設計者も施主に喜んでほしくて設計をしますので、変更設計料の請求は間違いなく
設計者と施主との関係を悪くしてしまうものなので、設計者が請求を限界までガマンすることが
多いでしょう(中には大赤字になってしまっても請求できないお人好しの方もいます)。
これを見て、
「お人好しの設計者を探せば、変更し放題だ!」と思った、新築を計画中の施主がいましたら、
設計者としては、とても悲しいです。。
誤解を恐れずに、申しますと、
そのような考え方が、耐震偽装事件の根底にある一番大きな問題であると認識してください。
良い家は、安くはありません。
良い家は、早くはできません。
メディア等の情報に惑わされないようにしてほしいと思います。
現状は、構造設計料も設計者(意匠設計者が大半です)の設計料から支払われるので、
変更に対する構造検討費用も当然ながら払われないことが多いです。
このようなことの積み重ねが、安全性を脅かす建物を多く作り出していることを、施主の方々にも
もっと認識してもらう必要があります。
(一般的な、木造2階建てはこれまで構造設計の義務がありませんでしたので、確認申請後の
変更設計が多々行われていることが多いと思います)
常識的なモラルの問題だと思いますが、いざ当事者となると、安く、早くを求めてしまうものです。
個人的には、
飲食店に入ったときに、メニューを見て全部0円だったとしたら、、
わたしは、ちょっと怪しくて注文する気になりません。お腹が痛くなったら嫌ですし。
(分野が違いますが、問題になっているソフトバンクの予想外割なんかも、どうなんでしょう・・
シェアを拡げた後に強みのコンテンツ利用料等でペイできる公算なのでしょうけど・・)
わたしは、安くて早くて美味い「吉野家の牛丼」が大好物です(でした)。
でも、一生に一度の買い物だとしたら、「吉野家の牛丼」では嫌です。
「吉野家の牛丼」でも良いという施主は、ハウスメーカーの量産型の住宅や、
マンションを購入したほうが懸命だと思います。
・・・
まだまだ、いろいろと書きたいことがあるのですが、長くなりすぎました。。
それだけ、設計という仕事の背景にはいろいろあるんです。
きりがないので、今回は以上です。また書き加えたりしていきます。
次回は、施主がデベロッパー(不動産会社など)の場合のマンション編です。
もっと、いろいろと書くことがあります。。。




コメントする