前回のつづきです。
構造設計はあくまでも基準です。
なので、最近ニュースでよく用いられる耐震強度なる数字
0.7とか1.1とかはあくまでも基準に対する数値です。
1.0を下回ると必ず壊れる!とは誰も言えないのです。
言えないどころか、ベテラン構造設計者ほど耐震強度の
示す数字の無意味さを知っているはずです。
(注:1.0以下を正当化しているのではありません)
実際、わたしが経験した構造計算でもこんなことがありました。。
中規模程度の地震を想定した構造設計(1次設計といいます)
ではNGなのに、
大規模地震を想定した構造設計(2次設計といいます)では
OKになるという結果がありました。
そこで、1次設計でOKになるように鉄筋を増やすと今度は
2次設計ではNGになってしまいました。。
構造計算(RC造では特に)では、よくこのようなことが起きます。
(建築専門の方だけ/・・・/内も読んでください)
/・・・
14階建てのラーメン構造のRCマンションで、
3方向からの斜線制限があり各方向からセットバックして
アンバランスな形態だった。
ある階の大梁の鉄筋が1次設計で不足するので
増やすと、2次設計(保有水平耐力計算)でNGになる。
鉄筋を増やさないと1次設計はNGだが、2次設計はOKになった。
その階の大梁の耐力が増すことで崩壊メカニズムに微妙に影響して
2次設計で保有水平耐力が不足してしまう。
それどころか、鉄筋を増やすことで大梁部材がFDとなってしまって
保有水平耐力の値は急激に低下してしまう。
終局強度の算定方法を変えてみたり、層間変形角を変えてみたり
してなんとか成立したが、構造設計の本筋からは外れたテクニック
を用いないと現在の電算出力による構造計算書を正確に作れない
矛盾を示す良い例だと思う。
・・・/
構造設計は、
今ではパソコンなしにはできないほどのスピードを要求されます。
でも、パソコンはあくまでもツールであって判断は当然ながら
構造設計者がするのです。
構造計算ソフトをインストールしたパソコンの出した結果に
翻弄されて自分の判断を歪めてしまっては意味がありません。
でも、、
構造計算書は、パソコンで出力したものでないとお役所や
審査機関は認めてくれないことが多いです
(大臣認定番号があるとか、ないとかというくだらないレベルでの
議論になってしまいます)。
鉄筋一本増やしただけで、計算結果が大きく変わるのが
パソコンでの構造計算なんです。
実際の建物がそんなに繊細なものでしょうか?
それは、間違いなく「NO」です!
そんなに繊細だとしたら、
建物を人に作らせること自体が間違いだというのと同じです。
現場監督に、
「構造計算とおりに施工しなさい!」と言えば、
「総工費と工期を2倍にしろ!」と言われるでしょう。
構造計算技術は、「ハイテク」かもしれませんが、
建築は今も昔も人の手で作る「ローテク」なんです。
なので、「ローテク」で作ることを想定するための
ある程度の「余裕」を持たせて構造計算をするのが
正解だとわたしは考えています。
でも建築業界は、
時は金なり、
鉄筋1本も金なり、
1.2より1.1のほうが安い!
という商業主義が勝っています。
あるデベロッパーの担当者は、計算書を見るなり
「1.2ならまだ余裕あるから鉄筋減らして」
と言う方もいました。
ひどい場合は、
「この金額になるように構造設計して」
なんてことも。。
1.0ぎりぎりの建物は、建設の過程で0.8になる可能性は
大いにあるんです。
人が長期間作るものにミスは必ずあります。
現場が、鉄筋の発注で鉄筋の本数を間違えたり、
方向を間違えて施工したりなんてことはしょっちゅうあります。
(当然、代替案で施工してもらいますが)
構造設計というものが、どんなものなのか?を
多くの人(デベロッパー、ゼネコン、エンドユーザー)に
知ってもらう必要があると思います。
A氏の構造設計の鉄筋は、誰が見ても少なすぎなので
弁解の余地はありませんが、
1.0とか0.75とかの意味も分からずに数字だけが
一人歩きしている現状には、いかがなものかと思っています。
・・・
あっ、ちなみに長くなりましたが、
ここまでが前置きです(笑)。
次回は、
難しい計算をしなくても分かる構造設計、
エンドユーザーが定量的に判断できる構造設計の提案、
を書いてみたいと思います。




こんにちわ。
そうそう・・これなんですよね。(^_^;)
耐震問題がクローズアップされるわりには・・こういう実際の仕組みというか「感性」といった部分での話がまったく度外視されている実状には・・困った思いがありました。
なぜ・・テレビなどにでてくる「専門家」という方は・・こういう部分の話をさけるのでしょうかね。
法律を否定してしまうことに繋がりかねない要素だからかもしれませんが・・(^_^;)
実際にそうですよね。
パソコンで得られた結果が・・現実として「良いもの」とは限らないのが・・「建物」という存在であると私も思っています。
なにせパソコンに入力できないような要素・項目なんて無限に近いくらいあるのですから。(^_^;)
続き・・楽しみにしています。
いつもコメントありがとうございます。
建物を「モデル化」する時点で、
柱も梁も「線」にしてしまうのが構造計算のモデルなので、実際の建物の挙動を完全に把握することはできません。
(鉄骨はある程度計算結果に正直ですが)
だからといって、
FEM解析の完全立体ソリッドモデルで実際と全く同じ解析モデルを作って計算する必要はないと思っています。
それはやはり、建築は人が作るものだからです。
RCの柱梁仕口部の配筋を実際に見れば、構造計算で余裕を見ておく必要性がわかると思いますので(苦笑)、現場見学をいろいろな方にしてもらいたいですね。